原文の公開日 · 2026-09-19
納品に向いたフォルダが、写真探しにも向いているとは限らない
フォルダは、もともと優れた納品手段です。保存場所が明確で、既存のアクセス権を利用でき、一式をまとめてダウンロードする用途にも向いています。社内のクラウドやバックアップの運用にも組み込みやすい方法です。
だから、「フォルダはもう古いのか」という話ではありません。分けて考えたいのは、次の二つです。
一式を漏れなく納品することと、大量の写真から一枚を見つけることは、同じ作業ではありません。
前者はファイルがすべて届いたかを確認します。後者は、利用者が自分の持つ手がかりから必要な写真へたどり着くまでを扱います。
整理する人は進行を知っていても、探す人は知らない
撮影者や主催者側の担当者が写真を整理するとき、イベントの構成に沿って名前を付けるのは自然です。
- 01_受付・会場風景
- 02_開会の挨拶
- 03_パネルディスカッション
- 04_表彰
- 05_交流・集合写真
時間と進行に沿ってイベントを再構成できるので、記録を保管するにはよい構造です。
しかし、別の人が写真を探すとき、頭の中にある手がかりは違うかもしれません。
「ブースの前で会長と一緒に写った写真」「登壇者が記念のメダルを持っている写真」「プレゼンの表紙に使えそうな横位置の写真」。手がかりになるのは人物、用途、場所、物であり、進行表の項目名とは限りません。
整理した人には明快な構造でも、探す人には「自分の欲しいものは、誰かがどの分類に入れたのだろう」と推測させることになります。
どちらかが間違っているのではなく、分類の仕方が異なるのです。
写真の探しにくさは、情報設計の問題でもある
情報の分類に、あらゆる場面に通用する正解はありません。Nielsen Norman Groupが紹介する「ツリーテスト」は、利用者に探す課題を渡し、階層構造をたどって正しい場所に着けるかを調べる方法です。一般的な設計原則に従っていても、分類やラベルが利用者に伝わるかは、設計者だけでは判断できません。出典:NN/g、Tree Testing
イベント写真でも同じことが起きます。
日頃から進行表を使う担当者なら、「パネルディスカッション → Panel 2 → Q&A」で分かるかもしれません。初めて写真を受け取る参加者が覚えているのは、「午後、ある人と一緒に撮ってもらった」ということだけかもしれません。同じ案内経路が二人に合うとは限りません。
確かめるべきなのはフォルダの見た目が整っているかではなく、対象となる利用者が、自分の持つ手がかりで必要な写真へたどり着けるかです。
フォルダでも、探しやすくできる
フォルダと検索機能を対立させる必要もありません。
たとえばGoogle Driveには検索欄があり、ファイルの種類、ファイルに関係するユーザー、更新日、Drive内の場所などで絞り込めます。ここでいうユーザーは所有者や共有相手などを指し、写真に写った顔を認識して探すという意味ではありません。出典:Google Drive ヘルプ
フォルダで納品するからといって、階層を一段ずつ開く方法しか使えないわけではありません。別のツールへ替える必要があるとも限りません。
利用者が共有ドライブに慣れている、検索に使える言葉を知っている、社内の管理ルールが定まっている。そうした場合は、既存のフォルダで十分なこともあります。
問いを変えてみます。この写真群は、普段どんな探し方をされるのか。今の入口は、その手がかりに対応しているか。
まずは小さな改善から考える
写真探しがときどき滞る程度なら、新しいシステムを増やす前に、納品の仕方を見直します。
よく使う写真をセレクト用のサブフォルダに分ける。最上位を「登壇者/表彰/ブランド/集合写真」のように用途に近い名前にする。サムネイルで見渡せる状態を保つ。必要なら、分かりやすいファイル名や簡単な索引で、どこに何があるか伝える。
「影像策略06:担当者が困らない素材整理とは」(中国語)と同じ方向です。整理は保管のためだけでなく、次に使う人のためにも行います。
そのうえで、どれだけ問題が残るかを見ます。入口を一つ増やすたびに、管理、周知、権限の確認、担当者からの説明といった別の負担も生まれるからです。
新しい画面が美しいことは、効率が上がった証拠ではありません。元の作業にあった不便を解いたときに、初めて価値があります。
別の写真検索の入口を、いつ検討するのか
目的が「担当者が写真一式を受け取る」から「多くの人が、それぞれ別の写真を探す」に変わると、フォルダの利点が、そのまま利用者の利点になるとは限らなくなります。
探す人が進行を知らない。同じ写真群に多くの用途がある。担当者が頻繁に代理検索と転送をしている。利用者ごとに手がかりが違う。こうした条件が繰り返し現れるなら、写真の閲覧や検索に特化した入口を検討する意味が出てきます。
あくまで検討する意味があるのであって、必ず導入すべきということではありません。
反対に、一式の保管、決まった担当者への納品、既存のアクセス方針、自社クラウドへの移管が目的なら、フォルダのほうが直接的で、維持の負担も小さい場合があります。
作業に合わせてツールを選ぶ
前回の「600枚の写真を納品したあとに残る、『見つける』という仕事」では、「ファイルが存在する」と「必要な人が見つけられる」を分けました。今回はさらに、同じファイルでも整理の仕方は複数あり、その良し悪しは納品、保管、探索のどれを助けるかで変わると考えます。
フォルダは納品のためのよい入れ物です。ただし、その構造がすべての利用者にとっての道順になるとは限りません。
フォルダで目的が果たせているなら、システムを増やす必要はありません。探すことが問題なら、どのツールが新しく見えるかより先に、利用者がどんな手がかりを持って来るのかを見たいと思います。
本記事は、撮影計画と写真活用に関する一般的な参考情報です。実際の進め方はイベントの形式、会場、日程、個別の要件によって異なります。サービス範囲、料金、納品仕様、契約上の約束を定めるものではありません。実際の業務内容は、双方で確認した提案、見積もり、契約に従います。